こうした現在の小学校とは別に、ポーテージと他の2ケ所(デスメットとスーフォールズ)で、資料館として保存されている1880年代以前の小学校を見ることができた。いずれも1教室しかない粗末な木造で、全学年一括の複式授業だったという。星条旗、リンカーンの肖像、アメリカの地図、賞状、ボロボロの教科書、手洗いの水盤などが、いかにも昔風である。私は、アメリカの古い町には、たいていこうした歴史資料館のようなものがあるのではないかと思った。
百数十年前の開拓民時代、困窮の中にあってなお希望に燃えて働き、助け合い、夢を実現してきた歴史を振り返ることは、今日のアメリカ人にとって、そのアイデンティティを確立する上で、重要な働きをしているのではないだろ うか。
(2)非行少年のための教護院(私立、10-18歳の男子55名収容、パートを含む教職員40名。SD)
スーフォールズ郊外にあり、農作業や馬の飼育などをしながら更生を目指している。夏休み中で数名を残して帰宅させているとのことで、宿舎はがらんとしていた。以下職員の話。
「ここには塀はなく、しょっちゅう逃亡したり、暴力を振るう者は入れていない。(より程度の重い少年のための刑務所のようなものは別にある。)非行を犯した者、家庭に恵まれないもの、学校に行かない者などのため、そのレベルに合ったところから勉強させている。ここに来る少年たちは普通の「罰」は全て経験済なので、同じことをやっても全く通用しない。いかにしてやる気を起こさせるか、いかにして自立させ、正常な人間関 係を結べるようにさせるか、ということに重点を置いている。
1人1人にやるべき仕事(chorse)を与え、よい事をしたら「特典」を与えるなどをしてほめてやる。毎週金曜日に3ドル50セントを与え、どのように使うか考えさせる。スポーツなど、どこのチームにも入れてもらえなかった少年たちなので、公共施設の使い方も兼ねて町のスポーツ施設も利用している。ここに入る少年には、まず自分の州の旗の前で写真を撮ってもらう。その時はやせて小さかったのに、ここで十分な食事をし、規則正しい生活をすると、数ヶ月後には全く別人のようになってくる。この施設のために基金をつくってくれた人たちが財政面を支えている。食費については州の補助をいただいている。」
(3)知恵遅れの大人のための施設(私 立、275人収容、パートを含む職員240名。SD)
玄関に「スーフォールズ障害者職業学校」の標札。中に入ると沢山の男女がいて、ブラインド用のひもや物を乗せる台のようなものを作ったり、古紙をリサイクルのため分類したりしていた。製造のための機械も、収容者の能力を考え、扱いやすく単純作業になるよう工夫されていた。ここで働いた分については賃金を出しているとのことだった。ダウン症候群の人が多いようだ。人なつこく話しかけてくる人もいた。また、言語障害もあって全く話のできない人もおり、その人たちは絵文字のついた板のような補助具を使い、どれかの絵の部分を押すと、例えば「仕事が終りました」などと音声が出るようになっていた。
食堂(写真)では収容者にも配膳の作業をさせていた。日本ではこういう知恵遅れの大人たちはどこで何をし ているのだろうか。
(4)貧しい人々に食事を提供する施設(私立。スーフォールズ。SD)
入口にBanquetと表示されている。厨房、食堂、集会室などがあり、中高生のボランティアを含む30名くらいが働いていた。食事は毎日ではなく、週3、4回だという。私たちが4時頃着いた時には、すでに20人ぐらいが5時半からの食事を待っていた。ここの施設の精神は「貧しい人に恵みを施す」というものではなく、「人を招いて共にごちそうにあずかる」ということで、来てくれた人々とのコミュニケーションを大切にしているということだった。入れ代わり立ち代わり150人くらいは釆ただろうか。小さな子どもたちも親に連れられて来ていたが、その子どもたちはここに来た時だけ牛乳を飲んでいるのだという。私も一緒に食事を して、折り紙で飛行機を作ったりして遊んでやった。いかにも貧しい身なりや日に焼けた顔の人々を見て、この人たちは一体どこからやってきたのだろうか、と不思議に思った。159の団体、教会が財政面を支えているとのことだった。
(5)性の問題で悩んでいる女性のための無料相談所(私立、クリントン、IA)
Crisis(危機)と表示。電話受付もあり、一人の専従を除いて、24時間体制でボランティアの人たちが担当している。妊娠についての模型、ビデオ、書籍、パンフレット、ベビー服等が分類されていた。「今年はすでに600人が相談に来た。妊娠したかどうかの検査も無料でやっているが、去年は30%が妊娠だった。家を出された娘さんも来るが親代わりになって面倒をみている。子供の欲しい夫婦も多いので、赤ちゃんを里親に預けることもしている。これまで12歳から54歳まで妊娠の例があった。ここは説教をする場所ではないので、最終的にどうするかは本人の意志にまかせることになる。こうした施設はアメリカ全土に3,000個所もある。学校でも性教育をやっているが、アメリカでは毎年100万人のティーンエイジャーが妊娠しており、� ��の人たちを含めて150万人が堕胎している。性を遊びと考える風潮が最大の問題である。」
こうした説明を受けた後、次のような問答があった。
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