365日映画:フルメタル・ジャケット
監督、製作、脚本は、スタンリー・キューブリック。
" 巨匠のなかの巨匠と称されるスタンリー・キューブリックの監督作品 "
べトナム戦争の時代のアメリカ合衆国海兵隊新兵訓練基地。
これからベトナムへ旅立つため、8週間の地獄の特訓を受ける新兵たちが入隊してきます。
彼らはすぐに頭を丸刈りされ、整列させられて、
鬼のような訓練教官ハートマンからウジ虫呼ばわりされ、厳しい訓示を受けます。
「黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下したりしない。すべて平等に価値がない!」
「おまえの顔を見たら嫌になる! 現代美術の醜さだ!」
「両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない」
「地球上で最下等の生命体」
という、これよりも口汚い言葉を一定のリズムで奏で、並べ、罵ります。
ハートマン教官の言葉には、
" see "" shit "" asshole "などを引っかけ、
英語の発音的な観点からも非常にリズミカルに口汚く、怖いです。
新兵たちは口答えは許されず、喋っていい言葉は、「サー、イエッサー」のみ。
訓練教官ハートマンは、苛酷で厳しい訓練を新兵たちに課し、容赦なく彼らをシゴきます。
そして、なにをやらせてもノロマで不器用なデブのパイルはいじめの対象とされ、
パイルのミスのとばっちりは他の訓練兵に及び、仲間からもささやかなリンチにあいます。
そんなパイルを主人公はかばいますが、パイルは徐々に精神に異常を芽生えさせ、
感情の無い人間に変質し、目つきも変わります。最後には機械のような優秀な狙撃手になります。
国民の痛みセンター
しかし、卒業前夜にトイレで狂気が爆発し、
ハートマン教官の、「そこまで機械にならなくていい」という普通の言葉に、
パイルはハートマン教官を撃ち殺し、自らも銃をくわえて絶命します。
圧倒的な、スタンリー・キューブリックの手腕が冴える才能溢れる映画です。
「フルメタル・ジャケット」は二部形式で第一部で描かれるのは人間の効率化。
一般にスポーツ・チームや会社組織など戦力と揶揄されるものには、
軍隊方式より、個性の重視と個性に見合った適材適所が有効とされています。
が、その戦力数値の単位が100を越え、目的が結果だけと標榜できる場合に於いては、
軍隊方式の方が優位となります。なにしろ軍隊方式は無駄な議論が必要ありません。
個人の個性や楽しみが削除され、能力が均一に高められ整然化もされます。
方向性を間違えなければ絶対的な勝利の結果が生じます。
ただ過去の戦争に於いて、その方向性が総合的に正しい方向に向かったことはないのですが。
第一部で描かれるのは、人間の効率化による個人の喪失。
第二部で描かれるのは、個人を喪失させてまで創られた戦力の無意味さとばかばかしさ。
戦争映画は、「ディア・ハンター」など反戦映画が多数作られてはいますが、
反戦映画が作られたからといって、戦争が実際終わったことはありません。
反戦映画がいくらあっても、アフガンでは今日も殺戮があるのです。
戦争を鼓舞する映画も良くはないですが、
反戦映画も流行と同じで、平和な時代にはたんなる虚飾装飾として製作されます。
盲目な反戦映画の賞賛もよくはありません。
アイダホフォールズのポスト·レジスタ
この「フルメタル・ジャケット」のように、
映画を観た人に感覚的に気分を悪くさせ、軍隊を面白おかしく茶化し、
戦争には、複雑な事情などかけらひとつも無く、ただいい加減さがあるのみという
人間の感覚的嫌悪感に訴えるアプローチの方が反戦映画としては上質とも感じます。
いい映画です。
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フルメタル・ジャケット (1987)
監督 スタンリー・キューブリック
製作 スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー
製作総指揮
ヤン・ハーラン
原作 グスタフ・ハスフォード
脚本 スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
撮影 ダグラス・ミルサム
美術 キース・ペイン、ロッド・ストラットフォード、レス・トムキンス
衣装 キース・デニー
編集 マーティン・ハンター
音楽 アビゲイル・ミード
出演 マシュー・モディーン
アダム・ボールドウィン
ヴィンセント・ドノフリオ
R・リー・アーメイ
ドリアン・ヘアウッド
アーリス・ハワード
ケヴィン・メイジャー・ハワード
エド・オロス
ジョン・テリー
キーロン・ジェッキニス
カーク・テイラー
ティム・コルチェリ
ブルース・ボア
サル・ロペス
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物語
水晶滝老人ホーム
サウスカロライナ州の合衆国海兵隊新兵訓練基地。
ベトナム戦争のさなかの今日もこれから8週間の地獄の特訓を受ける新兵たちが入隊してきた。
ジョーカー(マシュー・モディン)、パイル(ヴィンセント・ドノフリオ)、
カウボーイ(アーリス・ハワード)といった面々たち。彼らは早速頭を丸刈りされ、
整列させられて、鬼のような訓練教官ハートマン(リー・アーメイ)からウジ虫呼ばわりされ、
厳しい訓示を受ける。実際訓練は苛酷で厳しいもので、しかもハートマンは容赦なく彼らをシゴく。
特に何をやらせてもノロマで不器用なデブのパイルはシゴきの対象とされ、
あげくはパイルのミスのとばっちりが他の訓練兵に及び、仲間からもリンチにあう。
そんなパイルをジョーカーは精一杯かばうのだが、パイルは徐々に精神に異常をきたし、
目つきも変わってくる。遂に卒業前夜にトイレで狂気が爆発、ハートマンを撃ち殺し、
自らも銃をくわえて絶命する。
時が過ぎ、新兵たちも一人前の海兵隊員としてそれぞれの部隊に配属され、
ベトナム戦線も終盤に近づいた1968年1月。ジョーカーはダナン基地において
報道隊員として比較的のんびりとした生活を送っていた。だが北ベトナム軍の
激烈なテト(旧正月)攻撃が始まり、ジョーカーは純真なカメラマンのラフターマン
(ケヴィン・メジャー・ハワード)とともに最前線のフエ市へ向かう。
そこではタッチダウン軍曹(エド・オーロス)の指揮のもと、自らを殺人機械として自負する
アニマル・マザー(アダム・ボールドウィン)や黒人のエイトボール(ドリアン・ヘアウッド)、
クレイジー・アール(キアソン・ジェキニス)といった兵隊たちが集まっていたが、
そこでジョーカーはカウボーイと感動の再会をする。それもつかの間、彼らは銃火の真っ只中に。
前線を偵察中、対面の廃ビルにひそむ凄腕の敵の狙撃兵にやられ、エイトボールや
ドク(ジョン・スタフォード)が撃たれ、カウボーイも撃ち殺される。決死の復讐を誓った
アニマル・マザーやジョーカーは廃ビルに侵入、狙撃兵を撃って瀕死の重傷をおわせるが
まだ年端もいかぬ少女兵であることを知って呆然とする。
「わたしを・・・・撃って」
嘆願する少女兵を狙って、ジョーカーは震える指先で銃の引き金を引き、とどめを刺す。
夕焼けの戦場。兵士たちはミッキーマウス・クラブの歌を唱和しながら前進を続ける。
" 俺はまだこのクソ地獄にいる、しかし、生きている、除隊も近いだろう "
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Story
見事にマッチしたキャスト達がスタンリー・キューブリックの元に勢揃い。殺人者になるべくトレーニングされる非人間的なプロセスを描くベトナム戦争映画。ジョーカー(マシュー・モディーン)、アニマル・マザー(ア...
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